子供たちに食育ができない
難しい食育
子供たちに「食」について教育することはとても大切なことです。
将来の人格形成にも影響を及ぼすものでもあります。
正しいものを食べることでしっかりとした健康的な体作りをしていかないといけません。
そして食の生産現場を知らないと、この野菜やお肉、魚がどうやって生産されているのか?
加工食品はどうやって製造されているのか?
全く知らない子供が沢山います。
本当か嘘かわかりませんが、魚の切り身が海を泳いでいると信じている子供がいたとかいないとか。
これは極端な例ですが、実際に食の安全性を考えるとこの過程を知らないと、自分の身の安全を計る
ことすらできません。
どうやって子供たちにそれを伝えていくか、それはまず親がそれを理解しないといけません。
親に基本的な知識がないと子供に教えるとこができません。
食育が難しい理由
はたして今の食生活が子供にとって正しいものなのか分からない親御さんも多いかと思います。
その理由としては
①共働きで忙しく、時間短縮のために加工食品を使用する比率が高い
②学校でも嫌いなものを無理に食べさせなくなっている
③取り扱いが便利な食品が増えている
④情報の氾濫
⑤そもそも親に知識がない
コロナ禍で家にいる時間も増えていますが、リモート打合せなどのストレスフルな時間も増え
なかなか食事の準備もままならない方も多いと聞きます。
私は50代ですが、子供の頃給食が時間内に食べきれなかったり、嫌いなものを残していると
昼休みの時間も給食を食べきるように強要されたものです。
皆が昼休みに校庭で遊んでいる姿を恨めしく思ったことも同年代なら理解できますよね。
最近生協やオイシックスなどが開発している、ミールキットなど調理が簡単にできる商材が増えています。
今日のご飯何にしようと迷うことなく、キットを買えばメニューも決まるし時短にもなるので、忙しい
方にはうれしい商品が買えます。
そして、食に関する情報はインターネットで氾濫しています。
何を信じてよいかわからない・・・何が正しい情報なのかわからなくなっています。
つまり親に知識がないからです。
まず親が知らなくてはならないこと
私は長らく食品業界で働いていたので、一般の人達たちよりは食品に関する知識があります。
それは当然ですね。
建設業界にいれば建物のこと、通信業界にいればスマホやパソコンのことに詳しいのは当たりまえです。
食品業界にいて思ったことは、日本人は「味覚」については世界一素晴らしいものを持っているということです。
同時に「食についての知識」が乏しい国民性が見受けられます。
食品の異物混入や賞味期限に関しては、非常に敏感なのですが、
普段食べているものの安全性などには無頓着です。
値段が安い理由も考えずに購入していたりするのもそうです。
その食品がどのように生産されているのかを知ることは、とても大切なことだと思います。
何故PETボトルのお茶の賞味期限が長いのか?
昔は
「宵越しのお茶は飲むな」と言われていました。
昨晩入れた残ったお茶を飲むとお腹を壊すからです。
何故かというと、お茶に含まれるたんぱく質が腐敗してしまうからです。
そしてお茶はとても酸化しやすい性質を持っています。
酸化した食品を取るのは身体に良くありません。
以前はこの酸化によって、お茶は飲料製品にできませんでした。
特に緑茶は烏龍茶、紅茶などと比較しても酸化度合いが激しい特徴があります。
このたんぱく質の腐敗と酸化を止めるには、殺菌と酸素の除去技術が必要です。
私が働いていた伊藤園が開発したのが最初です。
緑茶ではなく、烏龍茶からスタートしました。
当時はまだペットボトルでなく缶でした。
缶に烏龍茶を詰める前に、高温で殺菌を掛けます。
80度以上に加温してから缶に詰めます。
その際窒素を吹き付けます。
缶に中にある残存酸素を極小化して酸化を防ぐのです。
この技術が後のお茶飲料を生み出しました。
缶に詰めた後、更に強烈な殺菌「レトルト殺菌」を施します。
120以上に加温し圧力をかける釜に入れ20分以上殺菌を掛けることで、安全に長期保存できる
烏龍茶の出来上がりです。
レトルト殺菌後のお茶の味は全くわかりません。
「芋臭」といわれる、芋みたいなにおいがするので何を飲んでいるのか、わからないほどです。
時間とともに味が落ち着きお茶の味が戻っていきます。
しかし、これはあくまで長期保存できる飲料としての烏龍茶です。
急須で入れた、抽出したてのお茶の味とは異なります。
緑茶や烏龍茶の味といえば、缶やPETボトルの製品の味を連想する人は多いのではないでしょうか?
これは食育としておかしいことです。
加工されたお茶と急須でいれたお茶は別モノなのです。
加工されたお茶は、性質を保つために重曹なども添加されることもありますし、酸化防止のために必ずビタミンCは添加されます。
勿論安全性に問題はありません。安全を担保するために投入されているからです。
しかし、ビタミンCがアスコルビン酸ナトリウムであることを知る人はあまりいません。
ビタミンCとはアスコルビン酸ナトリウムのことなのです。
タンクで人工的に培養された添加物です。
例えばレモンに含まれている天然のビタミンCではありません。
それと同じ物性のものを人工的に作っているのです。
これを知っているか知らないかは大きな差を生みます。
成長ホルモン
例えばアメリカン産のお肉は和牛と比較するととても安いですね。
何故なのか?
①生産量が圧倒的に多い
②生産コストが安い
③効率的な生産工程
①まず世界一の農業・畜産王国であるアメリカは圧倒的な物量を生み出しています。
数の理論で安いのは当たりまえです。
②農業大国であるアメリカには膨大な量の穀物が生産されます。これが飼料に回ることで低コストでの
畜産物の生産が可能となります。
多くの穀物は遺伝子組み換え技術を施されています。
日本には遺伝子組み換え農産物は輸出されていませんが、輸入されているアメリカ産牛肉はたっぷり遺伝子
組み換え穀物を食べて育っています。
間接的に我々も遺伝子組み換え農産物を食べていることになります。
③効率的な生産工程
例えば牛肉の生産には時間が掛かります。生まれた子牛を大きく育てなくてはなりません。
コストを下げるには、この肥育期間をどれだけ短縮できるかにかかっています。
そのために、成長促進剤が与えられます。
いわゆる成長ホルモンを促進させ短期間で身体を大きくするのです。
アメリカ、オーストラリア、カナダではこのホルモン剤は普通に使用されています。
しかし、日本では使用が認められていませんので、使用不可となっています。
アメリカのみならず、オージービーフも和牛に比べて何故安いのかこれで理由がわかると思います。
勿論人体への影響は、各国で承認されていることを考えれば無いのでしょう。
しかし、大事なことはこの事実を知っているのかいないのかです。
お子さんに何故アメリカ産やオーストラリア産のお肉が安いのか聞かれたら教えてあげましょう。
大切なのは選択肢
近年の加工食品の品質はとても素晴らしく、安全性や美味しさも高レベルです。
外国産の美味しく安いお肉はどこでも買えます。
日本人の食文化もどんどん豊になっています。
大切なのは自らが正しい知識を持ち、選択をすることだと思います。
安く売られている理由、加工食品の製造過程、そういった知識を持ちながら選択をしていく。
毎日毎日全てオーガニックの野菜や果物を食べ、添加物を一切使用せず、無理やり身体を大きく
させられた動物のお肉を食べずに生活するのはとても大変です。
そしてこれからの社会は間違いなく、SDGsを求められます。
持続可能な開発ゴール(Sustainable Developing Goals)、地球環境に負荷を掛けない成長を法人も個人も
世界的に求められていきます。
この食品・製品の製造工程を理解して、どのような環境負荷を掛けているのか、そういったものを
我々の子供たちは理解しないといけない世界で生きていかなくてはなりません。
だから我々親世代がまず、知ることから始めないとならないのだと思います。